7歳の侯爵夫人
7歳、やり直し

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ーキャッ、キャッ!ー

ルーデル公爵邸の庭から明るい笑い声が聞こえてくる。
元公爵令嬢で現ヒース侯爵夫人、コンスタンスの笑い声だ。

コンスタンスは愛犬のフィルとボールを使って戯れている。
フィルは8歳だからここ12年分の記憶がないコンスタンスはもちろんフィルのことも覚えていなかったが、彼女は彼に一目会うなりいっぺんで気に入った。
フィルも大好きだったコンスタンスに久しぶりに会えたのが嬉しくて、コンスタンスが公爵邸に戻ってからは片時もそばを離れない。
それに、以前はお妃教育で忙しく、またその教育の成果で実家である公爵邸でもお淑やかに過ごしていたコンスタンスが、今は大声で笑い、走り回り、転げ回って、フィルと遊んでくれるのだから。

コンスタンスの笑い声は邸中に響き渡り、それを聞いている公爵夫妻の顔にも笑顔が浮かぶ。
また邸の中で働く者たちも、コンスタンスの楽しそうな声を聞いて笑顔になる。

コンスタンスが記憶を失って7歳の幼女に戻ってしまったことは、隠しおおせることではないし、もちろん邸中の者が知っている。
だが彼女の笑顔と笑い声は、ルーデル公爵邸に幸せな気持ちを振りまいていた。
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