7歳の侯爵夫人

13

近衛騎士の一団がルーデル公爵邸の前を過ぎてしまうと、コンスタンスは
「は~、行っちゃった」
とため息をついた。

「ねぇお母様。オレール、カッコ良かったでしょう?」
「ええ、そうねぇ」
「パレードを見に来た女の人たち、みんなオレールを見て手を振っていたわよね?でも残念でしたー。オレールは私の旦那様なんだから!」
「はいはい」

みんなと言うのは言い過ぎだが、若い女の子たちの多くがオレリアンを見てキャアキャア言っていたのは本当だろう。

「パレードはもういいの?」
「うん」

夫が目の前から去ったら、コンスタンスはすっかりパレードへの興味をなくしてしまったようだ。

その時、沿道の女性たちが
「あ、馬車が来たわ」
と騒ぎ出した。
見れば、豪華な馬車に乗った男女が、沿道に笑顔で手を振っている。
ついさっき式を挙げた、王太子夫妻である。

コンスタンスは特に興味もないような顔で、馬車の方へ目を向けた。
幼馴染で婚約者であった王太子だが、8歳までの彼しか知らないコンスタンスにとっては今や見知らぬ青年と同じである。
しかも先日王太子は、コンスタンスの大事な旦那様に何やら命令して凄んでいた。
なんとなく、手なんか振ってやるもんかと思ってしまう。

だがフィリップはしっかりコンスタンスの姿を見とめ、こちらに向かって手を振ってきた。
一瞬目が合った気がしたので、コンスタンスは小さくお辞儀をした。
貴族の夫人としての礼儀である。
< 194 / 342 >

この作品をシェア

pagetop