7歳の侯爵夫人

2

草だらけになってしまった服を着替えるためにコンスタンスが部屋に戻ると、窓辺の花瓶にまた見慣れない花が飾ってあった。
「また、贈ってきたの?」
コンスタンスは彼女の汚れた服を脱がせて眉間に皺を寄せている乳母のアンナにたずねた。

コンスタンスの知っていたアンナはおばさんくらいだったが、公爵邸に戻ってきて再会したアンナは変わってしまっていてびっくりしたものだ。
思わず
「アンナ、おばあちゃんになっちゃったの⁈」
などと言って母に叱られたものである。

窓辺の花は、ヒース侯爵が贈ってくるものだ。
侯爵は、三日に一度はこうしてコンスタンスに花を贈ってくる。

何度か面会も申し込まれているらしいが、それは父が断り続けている。
家族は、ヒース侯爵をコンスタンスに会わせたくないらしい。

どうやら侯爵はコンスタンスの夫らしいのだが、記憶にない夫など彼女にとっては遠い親戚よりもさらに遠い存在だった。
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