7歳の侯爵夫人
兄に言われ、コンスタンスは気まずそうにソファに腰掛けた。
そして顔を上げると、オレリアンは彼女を真っ直ぐに見つめていた。

「コ…、ルーデル公爵令嬢」
オレリアン母そう呼んで、少し苦笑する。
正直、なんと呼んだらいいのかわからない。
目覚めた時、彼女から名を呼ぶなと言われていた。
本当ならヒース侯爵夫人だが、妻をそう呼ぶのはおかしなものだ。

それに気づいたコンスタンスは泣きそうな顔で、また「申し訳ありません」と頭を下げた。
「どうぞ、どうぞ名前で呼んでください」
「それでは…、コンスタンス嬢」
「はい」
「毎日見舞いの花を贈ったのは、私の自己満足です。貴女が気に病むことではない。お聞き及びでしょうが、私は結婚してすぐ貴女を自領に送ったまま別居していたような、冷たい夫です。貴女が事故に遭ったのも、記憶を失ったのも、そのせいで今も頭痛に苦しむのも、全て私の罪だ。だから、私の記憶が全く無い貴女が私を遠去けるのは当然のことで、それを酷いだなどと思うわけがない」
「では、以前お会いしたいとお声をかけた時、断られたのは…」
「貴女が私を見て、また頭痛を起こされたらと思ったのです。私は貴女を苦しめる存在になりたくはない」

コンスタンスを見つめるオレリアンの目は穏やかだ。
彼のその真摯な態度に、コンスタンスは目を見張った。
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