7歳の侯爵夫人
真剣に訴えかけるコンスタンスを前に、オレリアンは一瞬言葉を失った。
そしてあらためて思ったのは、
(もう、俺の知っているコニーは居ないのだな)
ということだった。

今のコンスタンスは、自分の中では16歳になったばかりだと言う。
当然、オレリアンと蜜月を過ごした、自由闊達な『7歳のコニー』はもういない。
そして、何もかも悟ったような目をしていた、あの、オレリアンと結婚した当時の『18歳のコンスタンス』とも違っていた。

今の彼女は、真剣に『これからの自分』をどうするか考えている。
貴族の令嬢が一人で生きていくのは難しく、結局は実家や婚家で生きていかなければならないから。
だから、結婚をこのまま続行することを望めば、それはオレリアンに対して『狡い考え』だと思いこんでいる。

オレリアンはフッと肩の力を抜き、表情を和らげた。
何歳であっても、例え彼女の中に自分の記憶がなくても、それでもやはりオレリアンは、目の前のこの女性が愛おしいと思った。
表情も、紡ぐ言葉も違うが、彼女は紛れもなく自分が愛し、慈しんだ少女なのだ。

だから、強く思った。
彼女を守りたいと。
< 248 / 342 >

この作品をシェア

pagetop