7歳の侯爵夫人

7

「フィリップ、貴方はまだ仕事の途中だったのではなくて?」
王妃にそう声をかけられ、フィリップは弾かれたように母を見た。
母の存在をすっかり忘れていたのだ。
それに、たしかに自分はまだ仕事の途中であった。
母がコンスタンスを王宮に呼び出したことを側近から聞き、居ても立っても居られず執務室を飛び出して来たのだ。

「母上。私に知らせずコニーと会うなど、何を企んでおられるのですか?」
「企むなど…、人聞きの悪いことを」
母は微かに口元を綻ばせると、扇子を広げて顔の下半分を覆った。

フィリップはもう一度コンスタンスを見た。
彼女は相変わらず表情の無いまま、青ざめた顔でこちらを見ている。
決して、こんな顔をさせたかったわけではなかったのに。

「…悪かった」
フィリップはポツリと一言零すと、踵を返し、部屋を出て行った。
これ以上話していたら、更に彼女を傷つける言葉を口にしてしまいそうだったのだ。
一度この場を離れて、冷静になる時間が必要かもしれない。
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