7歳の侯爵夫人
一方フィリップは、王妃からの伝言を聞いて後宮へ急いでいた。
『コンスタンスに媚薬を盛りました。貴方が助けてあげなさい』
(母上!なんてことを…!)

たしかに母のコンスタンスへの執着は、少々度を過ぎているとは思っていた。
彼女を公式寵姫にというのも、母から再三言われていたことだ。

隣国では王族が妻や愛人を何人も持つのが普通であるため、正妃に迎えた隣国の王女も表立って何か言うようなことはしないだろう。
だが、フィリップはあくまでコンスタンスの気持ちを一番に考えたかった。
自分の側にいることを、コンスタンス自身が望んでくれねば何の意味もない。

そもそも側妃の話を持ち出したのだって、コンスタンスが夫に冷遇されていると耳にしたことがきっかけだ。
最初から夫婦仲良くしてくれていれば、関わらずにいたものを…。

そういえば、コンスタンスがヒース領に閉じ込められていた話も、夫の元恋人を庇って事故に遭ったのも、聞いたのは母からだった…。

血相を変えて後宮に向かう時、入り口に控えていたヒース侯爵と一瞬目が合ったが、フィリップは即座に目を逸らした。
今、夫である彼に何か悟られるわけにはいかない。
彼に悟られる前に、なんとかしなければ。
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