7歳の侯爵夫人

3

「7歳の貴女は、あんなに俺を慕ってくれただろう?16歳の貴女だって、生涯を共にと約束してくれたはずだ。俺はどちらの貴女も、可愛くて仕方なかった。償いで側にいたわけじゃない。貴女を愛していたからだ!」

突然の告白に、コンスタンスはさらに目を見開く。
「でも、貴方は償うと…」

「記憶が戻ったばかりで気持ちが追いついてない貴女に愛など告白しても重いだけだと思ったんだ。今の貴女の気持ちが俺に無いのはわかっている。だから償いなんて狡い言葉で貴女を縛ろうとした」

オレリアンは離縁を切り出したコンスタンスの気持ちをなんとか変えたかった。
だが、あの事故に遭った時、彼女の気持ちが自分から離れていたのは当然のことだしよくわかっている。
『償い』を理由にしてでも、離縁を回避したかったのだ。

「俺はもうコニー無しでは生きていけない。俺は、貴女と本当の夫婦となり、寄り添っていく未来を諦めたくないんだ。だから、もしまた何か間違えても、何度でもやり直すと思う。貴女が好きなんだ、コニー」

オレリアンの涙腺が決壊する。
双眸から大粒の涙がボロボロッと零れ落ちた。

それを見たコンスタンスは息を飲み、そして俯いた。
「でも、貴方が慈しんでくれたのは記憶がない時の私です。今の本当の私を、貴方が愛してくれるとは思えません」

「本当って何だ⁈全部本当の貴女だろう?あの、毎日裸足で駆け回った貴女も、俺に歩み寄ってくれると言った貴女も、俺のために手袋を縫ってくれた貴女も、全部本当の貴女だろう?俺は全部ひっくるめて、貴女の全部が好きなんだ!どうしてこんなに伝わらない⁈」
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