7歳の侯爵夫人
「コンスタンス…」
呟くように、その名前を呼んでみる。

彼女の手紙には、会いに来いとも、迎えに来いとも書かれてはいない。
自分を放置している夫を、詰る言葉もない。

それどころか、ヒース領に送ったことを感謝し、自分が快適に過ごせるのは俺が善政を敷いているせいだと言う。

『お会い出来る日を、楽しみにしております』

…本当に…?
本当に、彼女は俺と会いたいと思ってくれているのだろうか。

貴女は本当はどんな方なのだ?

俺は彼女からの手紙を額に押し当て、込み上げてくるものを飲み込んだ。


その後出かけていた義母と侍女が帰宅し、ダレルに問い詰められた侍女が全てを吐いた。
やはり義母の指示で、毎日届く郵便物を確認していたらしい。
その中に、コンスタンスから俺宛の手紙や荷物があったら全て捨ててしまえと。
指示通り手紙類は全て捨ててしまったが、ハンカチと手袋はほとぼりが冷めた頃売って金にしようと思っていたらしい。

手紙は、20通以上はあっただろうと言う。
今となっては、彼女が俺に何を書き送ってくれていたのかさえ知ることが出来ない。
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