もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「と、いうわけで、真相が明らかになるまではマリー様を危険な目に遭わせるわけにはいきません。それに無関係な者に秘密を話されても困りますので、城に滞在していただき、前回同様監視させていただきます」

「えっ、あっ。だって」

 監視ってハッキリ言っちゃってるし!

 孤児院育ちだから城にいる立場にないという言葉は、本当に意味がなくなってしまった。

 マリーの出生の秘密が誰かに漏れれば、それこそ命を狙われかねない。

 なにを訴えれば今の状況から抜け出せるのか、皆目検討もつかなくなってしまった。

「マリー」

 エリックに呼ばれ顔を上げ、俯いていたと気付く。

「マリーは結局、マリーの魔力の大きさに慄く動物たちとは、触れ合えなかったのだろう?」

 番の契りを解消されて城を出てからの状況を言い当てられ、「うぐっ」と悔し紛れの声が漏れる。

 そうか。魔力の大きさが、動物にはわかるんだ。

 マリーの変態じみた言動のせいではないと知り、少しだけホッとする。

「ここにいれば、聖獣と触れ合える」

 エサを目の前にぶら下げられ、心が揺れる。弱みを握られた気分だ。

「食事も食べ放題」

 魅力的な条件の提示に、意志が揺らぐ。

 どことなく不服ながらも、頭を下げてお願いする。

「疑惑が晴れるまで、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
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