もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「いや、待ってください。私、孤児院の出身ですし」

 カーティスや聖獣たちの世話をするとなると、毎日のように城に通わなければならない。王都に住まなければならないだろう。

 マリーには、あまりにも世界が違い過ぎる。

「魔力至上主義の我が国で、孤児院育ちがなんの意味を持つ?」

 簡単に言う王子は近い距離を更に詰めようと近づいてくるため、マリーは思わず後退る。

 身長差があり、まるで覆い被さるように迫られる一方で、足元からはスカートを引っ張られる。

 いつの間にか起きていたカーティスが、必死の抵抗とばかりに足元でマリーのスカートを咥え、エリックとは逆方向に連れて行こうとしている。

「だって、ほら。カーティスも離れろって」

 エリックは下から力一杯睨んでいるカーティスを一瞥し「後からよく言って聞かせる」と改めて迫ってくる。

 言って聞かせて納得するわけないでしょう‼︎ ああ、誰かこの王子を止めてください!

「とても可愛らしい治療士だ。これから毎日が楽しみだな」

 ご期待にはお応えできかねますー‼︎

 心の叫びが王子に届くことはなかった。
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