異世界で先生になりました~ちびっこに癒されているので聖女待遇なんて必要ありませんっ!~
第一章

プロローグ1


その日、アレキサンドライト王国では、聖女召喚の儀式を行っていた。

前王の急逝により、突如王位を継ぐこととなった青年王の地盤を固めるためである。

だが当事者である王、カイン=アレキサンドライトは、それを固辞していた。

そんな王に、家臣達はそれこそ三日三晩、儀式を行うよう嘆願した。前王は、賢王だった。

民から慕われ、家臣からも敬われた。

当然、その突然の崩御の知らせは、瞬く間に国中に知れ渡り、深い哀しみに包まれた。

そして継がれた王位。

まだ年若い王への期待と不安は半々だった。何分、前王とは性質が違う。

威厳はあるが、どちらかと言うと穏やかな雰囲気で聡明だった前王に対し、今代は冷静と言うよりもどこか冷ややかな印象で、何より武に長けていた。

魔物退治で多大な功績を上げていたため、ある程度の支持や人気はあったが、それと国を治めることは別だ。

それに、人間とは急な変化を不安に思う生き物だ。

慣れてしまった穏やかな生活が変わってしまうのではないかと思ってしまうのも、仕方の無いことである。

また、このところ瘴気が濃くなったことにより魔物が増えたことも、人々の不安を煽った。

国が傾く前兆なのでは――と。

そんな中、提案された聖女召喚の儀式。

古来より、幾度となく行われた儀式により喚び出された聖女は、国を安寧へと導いた。

時にはその知略で。

時にはその癒しの力で。

家臣達がそれに縋るのも、また仕方の無いことだった。

前王が遺したこの国を、民を、守りたかったのだから。

そして王は、静かに告げる。

儀式の準備をするように、と。
< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop