3.君を取り戻すためならなんだってする


 あれからひと月。

私の住む港町は連日冷たい雨が降りしきっていた。

「ママ。今日も雨だね」

 保育園のバスを待ちながら朝飛は言う。私は太陽を覆い隠している分厚い灰色の雲を見上げた。

「そうだね。梅雨だから仕方ないんだけど……」

「お空もずっとないてるみたいだね」

「え、」

 お空……も?

 驚いて朝飛の方を見るとこちらをまっすぐに見つめていた。

 雄飛と再会してから、私は彼の事を毎日のように考えていた。彼を追い返したことを後悔して悲しんで……でもこのままではいけないと朝飛の前では気丈にふるまったりして。

彼は気づいていたのだと思う。

ああ、母親失格だ。こんな幼い子を不安にさせてしまっていたなんて。

ごめんね、朝飛。ごめん。いつかちゃんと、前を向く。大丈夫、止まない雨はないから。

「ねえ朝飛、雨が止んだらお出かけしようか」

「お出かけ?」

「そう。ママとお出かけ」

「やったー―!」

 朝飛は嬉しそうにピョンピョンと跳ねた。

 その姿をみてほっと胸をなでおろす。私はいつも朝飛の純粋さに救われているのだ。彼の笑顔のためになら私はなんだってできる気がする。