4.結婚してください
その夜、朝飛は雄飛とお風呂に入った。
パジャマを着せてもらい、歯磨きの仕上げとトイレも全部雄飛に甘えて、一緒の布団に入って絵本を読んでもらった。満足したのだろう。
まるで電池が切れるようにぱたりと寝てしまった。
「やっと寝てくれた」
寝室のふすまを閉めて、雄飛がリビングに戻ってくる。
「全部させちゃってごめんね。大変だったでしょ」
「いや、全然。これくらいで大変だなんて言えるわけないよ。まひるはずっとひとりでやってきたんだろ?」
雄飛の言葉に今までの苦労を思い出して思わず泣きそうになった。だからつい、強がってしまう。
「……そんな。だって産んだのは私だし」
正直、産まない選択だってできた。でも私は産みたかった。雄飛の子を。
だからしかるべき責任は負う覚悟はあった。現実はそう甘くはなかったけれど。
「ありがとな。朝飛を産んでくれてありがとう。これからは二人で育てていこう」
「二人で?」
「ああ、そうさ。だから結婚して、まひる」
雄飛はポケットから濃紺の小さな箱を取り出した。