5歳の聖女は役立たずですか?~いいえ、過保護な冒険者様と最強チートで平和に無双しています!
最強聖女
 そんなこんなで、慌ただしくも私が転生してから二ヶ月の時が経った。
「フレディ、ご飯できたー!」
 だいぶここでの暮らしにも慣れてきた今日この頃。
 フレディともすっかり打ち解けて、今ではもう敬称も敬語もなくなっていた。
 本日の朝食はサンドイッチにコンソメスープ。昨日、採れたての野菜をたくさんもらったので早速使ってみた。
 そして今、私は生活魔法というものを使えるようになっている。生活魔法というのはその名の通り、生活に役立つ魔法だ。火を使ったり、水を出したり。これによって、料理はかなり楽になった。
 私は治癒魔法以外にも魔法の才能はあったようで、あっという間に生活魔法をマスターした。突然手から火を出した時は、フレディ驚いて固まってたっけ……。
「おはようメイ。あー、美味しそうなにおいがするな」
「フレディ、つまみ食いはだめ。ちゃんと身支度してから!」
 この二ヶ月で気づいたこと。フレディはズボラで朝が弱い。あとピーマンが嫌い。それ以外に欠点はまるで見つからないが、どこの世界にも完璧なイケメンはいないってことを思い知らされた。
 フレディも前よりは部屋を片付けるよう努力はしているし、私ばかりにさせるのが申し訳ないと料理もたまにしてくれる――が、いつも大失敗。その度に、私はよくこれで一人暮らしが成立していたなぁと思うのだった。

 午後は町の商店街に買い出しに来ていた。私の依頼がない日に、まとめ買いするのがお決まりだ。
「メイちゃん! 買い物かい? サービスしてあげるよ!」
「本当? いつもありがとう! おじさん!」
「メイちゃん、あたしのとこにもおいで! 外国の新しいお菓子が入荷したから、食べていきなよ」
「おばさんもありがとう! どんなお菓子か楽しみ!」
 ご飯を作るために足を運んでいるうちに、商人の人たちに顔と名前を覚えられ、みんなにとてもよくしてもらっている。
 最初は見知らぬ子供が突然現れたからか、周りもざわついていたが、もうそんなことはなくなった。
 フレディと一緒に来ることもあるが、フレディも今では商人の人たちと笑顔でコミュニケーションをとれるようになっている。私が来てから、フレディはかなり変わったとみんなが口を揃えて言っていた。
 逆に、みんなのフレディへの印象も大きく変わったと言える。
 そしてそれは――冒険者ギルドでも同じだった。

「おい、あの万年Fランクだったやつ、二ヶ月でAランクに昇格だってよ!」
「実はあいつ、めちゃくちゃ強かったらしいぜ」
「一緒にいる子供も、聖女としての能力は今ギルド内でトップらしいぞ」
 私たちは、この二ヶ月でギルド内の有名人になっていた。
 ギルドへ行くたびに、こういった噂話が耳に飛び込んでくる。
「メイ、今日はゴブリンの討伐だ。危険だったらすぐに逃げること。いいな?」
「りょーかい!」
 私たちは、ふたりでいろんな依頼をこなして行った。
 回復薬に必要な薬草を集めることもあれば、新種のモンスターの生態調査をしに行くこともあった。
 そして、最近では危険なモンスターを討伐しに行くことも。
 これは、フレディがBランクになれば私も一緒に行っていいとマスターが許可を出してくれたのだ。
 トラウマを克服したフレディは最強で、ものすごい早さで一気にランクを上げて行った。EからBになるのはあっという間で、つい先日Aランクにまで上り詰めた。今ではギルド内でフレディを馬鹿にするものは誰もいない。
 グレッグ(フレディに、〝さん〟など付ける必要ないと怒られた)たちは、私の聖女としての能力が復活したことと、格下に見ていたフレディの活躍っぷりが相当悔しかったようで、私たちを見るといつも舌打ちをしていた。
 フレディがBランクになってから、私もモンスター討伐に行けるようになったので、ランクをやっと上げることができた。。
 やはり、薬草ばかり集めていてもなかなかランクは上がらないものだ。討伐に出かけてから、私のランクはFからEへ成長した。ひとつアップしただけでもうれしいものだ。
 基本的に、私の役目は聖女の力でフレディをサポートすることだ。傷を負えばすぐに治し、毒を負えば解毒する。
 息の合ったコンビネーションで、順調に依頼をこなし続けた。

「メイ、俺たちっていいコンビだと思わないか?」
 依頼を終え、私たちは報告も兼ねてギルドに来ていた。受付が混んでいたので、休憩所に座って待機していると、フレディはうれしそうに私にそう言った。
「呼吸が合うっていうかさ。メイといると、負ける気がしないんだ」
「それは私も思う! フレディと一緒だと、モンスターが出ても怖くないもん!」
「そうか。メイも同じか。これからも時間が許す限り、俺たち名コンビとしてやっていこう」
「そうね! 私、ずっと冒険者をやり続けるつもりはないから! 私がやめるその日までは、一緒にがんばろう!」
「えっ……」
 私が言うと、少し間が空いた。ついでにフレディの顔色が若干悪くなった。……お腹でも痛いのかな?
「メイ、今のはどういう――」
「私、小さな村でゆったりとした生活を送るのが夢の! だから、その資金が貯まったら町を出るって決めてるんだぁ」
 憧れのスローライフを想像すると、顔がにやけた。冒険者としての生活は刺激的だが、自ら望んだものではないし。
「そ、そうなのか。それがメイの夢なら応援しないとな。うん。……いつかメイは俺の家からもいなくなるのか。想像するとつらくなってきた……」
「フレディ? なにボソボソ言ってるの?」
「いや! なんでもない! こっちの話だ」
 急に様子がおかしくなって。変なフレディ。
 フレディはその後、すぐに受付嬢に呼ばれ席を外した。
 休憩所でフレディを待っていると、それまで私たち以外誰もいなかった休憩所に、ひとりのお姉さんが入ってきた。
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