哀しみエンジン



そして、その日は幼い子ども達の扱いに難儀しながらも、何とか凌げたらしい。

つい先程までの賑わいは、すっかり落ち着き、大学のメンバーだけが残っている。

その中でも、未だに馴染めずにいた。

俺は1人離れた場所で、突っ立っていた。

しかし、不思議なことに、その時の気分は高揚している。

──何だ、これ……。

高揚していることに、困惑する俺の隣に誰かの気配を感じた。



「直江くん、今日はどうでしたか?」



気配の正体は清水さんで、初めて参加したということもあり、申し訳ない程、気に掛けてくれる。



「あ……楽しかった、です」



こんな感想を返すなんて、小学生じゃあるまいし。

それどころか、今時の小学生であれば、もっとまともなことを言うだろう。

だが、俺にはそれ以上は見つからなくて、黙ってしまった俺を、清水さんはまじまじと見つめていた。



「な、何ですか」

「ん? 小さな子、苦手って言ってたから、心配したけど……案外、楽しそうにしてくれて、嬉しいなと思って」



何故、他人のことが、そんなに嬉しいんだ。

そう思ったら、瞬間的に思ったことを包み隠すこともせず、つい口を飛び出してしまった。



「変な人ですね、清水さんって」



少しの間があって、怒らせてしまったかと不安なったが、そんな心配は必要なかったようだ。

少し目を見開いた清水さんが、何故かしら照れ臭そうに笑う。



「結構、失礼だよ。それ」



台詞と表情が伴っていない。

ただ穏やかそうな態度で居て。

思っていることが、全く見えてこない。

見えてこないが、伝わってくるのは、人並み外れた親切心の塊のような人だということ。

本当に変わった人だ。


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