哀しみエンジン
不満



******



あれから無事、服部先輩のお陰で、サッカー部へ入部することが出来た。

しかし、そこは俺が想像していた場所とは、まるで違った。

それに気が付いたのは、1ヶ月も経たない頃だった。



「お疲れ様です」



部屋の扉を開いて、挨拶をしても返ってこない。

人が居ない訳じゃない。

目の前には、ちゃんと大騒ぎをしている先輩たちが居る。

それなのにだ。

くだらない話をしては、大笑いをしている。

そのうちの1人の先輩が、ようやく入ってきた俺に気付く。



「おう、直江」

「……お疲れ様です」

「お前もこっち来いよ」

「いえ。結構です」



先輩の方へ視線を向けることもなく、練習着に着替える。

鋭い視線が容赦なく刺さり、痛いが完全なる無視を貫く。

この部室の中で、準備をしているのは俺を含めて、ほんの数人。

俺が想像していた場所と違い、絶望していた理由は、先輩たちのこの怠慢な態度のせいだ。

みんながみんなという訳ではないようだが、新入生の数人は、あちら側に取り込まれている。

己の意思かどうか、そんなこと、俺の知ったことではないが、後に後悔しないのか。

では、何の為にここに入ったのか。

非常に理解しかねる。


< 6 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop