もう二度と乗る事はないと思っていた、成瀬のアルファロメオ。


私が新しい篤との新居の場所を伝えると、
車内は沈黙が流れる。


もうすぐ家に着く時に、私から口を開いた。


「私、篤と別れてナツキの所に戻ろうと思っています」


ナツキはもう大丈夫だと言っていたけど、
そうは見えなかった。


そして、そんな姿は、またいつか同じ事をするのでは?と、
私に強い不安を残した。


今回、ナツキは助かったけども、
次は…。


「そうか…」


そう答える成瀬は、きっとそうなる事を分かっていただろう。


そして、成瀬も私と同じように、ナツキに死んで欲しくないと思っている事が分かる。


「けど…。
俺がそうなるように仕向けてあれだけど、
篤と別れていいのか?
お前、本当に篤の事好きなんだろう?」


「好きですよ…。
本当は、別れたくなんてない。
ずっと篤と一緒に居たい。

けど、ナツキが死んでしまう事の方が、私は辛いんです」


そう言葉にすると、ナツキの前で泣かないようにと耐えていた涙が、
溢れて来た。


ナツキに恋はしていなくても、
私にとってナツキはとても大切な人で。


久しぶりに会った今も、それは変わらなかった。



成瀬は泣いている私を気遣ってか、
道の端に車を停めてくれた。


篤の前では泣けないから、
私は思う存分泣いた。


もう涙が枯れるんじゃないかってくらい。