ようやく意を決して行った弁護士事務所で、私は自分の心に向き合うことを求められて混乱する。

 夫の覚悟をあの日叩きつけられたのに、なのに私はその覚悟を受け取れない。
 私が夫の覚悟を受け入れようが受け入れなかろうが、 夫の覚悟は私を置いて、勝手にどんどん突き進んで行く。
 夫はもう、私たち夫婦の終わりの始まりを私に突きつけている。私はその流れに翻弄されるだけ、私の意思の外で、私たち夫婦はもう終わりに向かって転がり出している。
 私たち夫婦の終わりは始まってしまっている。

 絶望の中せめてもと、弁護士に教えられたとおりに離婚届けの不受理の手続きに区役所へ行く。
 
 惨めだった。区役所の職員が哀れみの目で私を見ているような気がする。夫に勝手に離婚されないようにする届けを出しに来た中年の女を、顔を腫らして疲れ果てた身なりの中年の女を、惨めだ。