でも、ただひとつ━━━━━
彩姫子に、手に入らないモノがあった。

それが、琥珀の父親・湯王 琢巳だ。
琢巳は、努力も苦労もしたことがなく、なんでも手に入れてきた彩姫子が、初めて自分から欲しいと思った男だった。
しかし琢巳は亡き妻・梨沙子を愛していた。
それは、今も変わらない。

そして琥珀は、梨沙子によく似ている。

だからこそ、椿姫を琥珀にだけは渡したくないのだ。
琥珀を見ていると、梨沙子にバカにされてるような気分になるから。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「だから!
琢巳からも言って!椿姫と別れるように」
彩姫子はホテルから直接、琢巳に会いに来ていた。
「俺は琥珀がしたいようにさせたい。
それに、椿姫ちゃんも琥珀を好いてくれてるんだろ?
だったら、反対する理由はない!」
「渡さないわ!椿姫は絶対に……!!!」

「梨沙子に似てるからか?」
「━━━━!!」
「確かに、顔も雰囲気もそっくりだもんなぁ……
まぁ、性格は似てないけどな。
俺も琥珀を見てると、梨沙子を思い出す」
「………湯王家の人間はみんな、私をバカにするのね……だからこそ、椿姫は渡さないわ…」
彩姫子は、ソファーから立ち上がる。

「彩姫子」
「何よ…!?」
「俺は彩姫子をかなり傷つけてきた。
だから精一杯…償おうと思ってる。
昔のお前は、素直で可愛かったのにそんな風になったのは俺のせいだからな。
でも…琥珀と椿姫ちゃんのことは、譲れない!
だって、二人には関係ないだろ?
これは、俺達の問題だ!」