王子と姫の狂おしい愛
「どうして?」
「椿姫様…?」
「どうして誰も…私のお願い聞いてくれないの?」
椿姫の顔は涙でグシャグシャだった。
それでも止まらなかった。

「ただ…琥珀に会いたいだけなの!!」
「椿姫様?」
「もういい!部屋に帰るから、ほっといて!」
スタスタと屋敷に戻っていく、椿姫。
でも椿姫は、部屋ではなく裏口へ向かった。

もう全てが…どうでもよくなっていた。
自棄になり、ぼろぼろだった。

裏口から出た椿姫は、塀を見上げる。
「よし!」
椿姫は塀をよじ登った。
やっとのことで上までよじ登ったのはいいが……
今度は、下に下りられない。
「こ、怖い……助けて…誰か……
琥珀…助けて…!」

「椿姫!?」
「え……琥珀?どうして…?」
琥珀が塀の外に駆けつけてきた。

「それより、危ないよ!下りて!」
琥珀は椿姫の下まで来て、見上げて言った。
「下りれないの!!」
「は?」
「ここまで登ったのはいいけど、怖くて下りれないの!!」
「下りれないなら、なんで…そんな危ないことすんの!?」
「琥珀が…会えないなんて言うからでしょ?
私は琥珀に会いたかったの!
琥珀まで…私を責めないでよ!
どうして……?
どうしてみんな、私を責めるの!?
どうしてみんな、私のお願い聞いてくれないの?
どうして………」
「わかったから…おいで?椿姫。
絶対、抱き留めるから!
俺を信じて!」
琥珀が両手を広げて待っている。
その力強い瞳に、覚悟を決める。

椿姫は目をギュッと瞑り、琥珀に向かって飛び降りた。
トンッとしっかり抱き留めてくれた、琥珀。
「……っと。椿姫?大丈夫!?」
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