王子と姫の狂おしい愛
それから名残惜しそうに、仕事に出かけた琥珀。

「じゃあ…仕事終わったら、連絡するからまたいつもみたいに、迎えに行くからね!」
「うん、わかった!気をつけてね!
行ってらっしゃい、琥珀」
「………」
「琥珀?」
「……なんか、それいいな…!
夫婦って感じ!
でも…寂しい……
椿姫、キスしていい?」
椿姫の顔を覗き込んで言った。

「ダメです!」
「え…?」
「は?」
二階堂の言葉に、琥珀と椿姫が驚いたように、聞き返す。
「琥珀様。
もう行かないと、お仕事遅れますよ」
「は?わかってるよ!キスくらい…いいじゃねぇか」
「きっと琥珀様のことだから、キスだけでは終わりませんよね?
その後“離れたくない”と言って、駄々をこねて挙げ句の果てに、ついて来いって言い出しますよね?
椿姫様は、会社前まで連れて行かれる羽目になりますから」
「なっ…!」
図星だった。
きっと今、二階堂が言ったようなことを言ってしまうだろう。
琥珀は言い返せず、黙ってしまった。

「バレてる…(笑)
二階堂は琥珀のこともよく見てるのね…!
琥珀、待ってるから…」
琥珀の頭を撫でる、椿姫。
嬉しそうに微笑んだ琥珀が、椿姫に微笑んだ。

「じゃあ…行ってくる。
後から覚悟しててね!」
「もう…////!」

「二階堂」
「何でしょう?」
「ありがとう」
「え…?」
「琥珀に言ってくれて…私だったらきっと、琥珀を甘やかしてたと思うから…」
「いえ…」
二階堂は素直に喜べなかった。
だって、確実に琥珀に対する嫉妬の感情があったから。
< 26 / 46 >

この作品をシェア

pagetop