ドラマのような初恋だった
⚠思い出しながら描いています。少し、日本語が変だったら、ごめんなさい。


ドラマのような恋が、私の初恋でした。


出会いは私が五歳の時でした。

その日は、予防接種の為


近くの病院に来ていました。


私は注射が本当に嫌いで

針の先端を見るだけでも


怖くて涙が溢れるほどでした。



受付の椅子に座っている時

番号が呼ばれました。



私はこれから訪れるであろう

あの痛さ、恐怖が怖くなり


泣き出してしまいました。


「嫌だ、嫌だ!」と

泣き叫ぶ私を見て母親は困り顔。


そんな私をじーっと見つめる

男の子と目が合いました。


男の子は私の元に来て

思いがけない事を言いました。


「そうたと一緒にちっくんしよ!」


ちっくん

注射の事だと直ぐに分かりました。


私は急に怖くなって

ブルブル震えていると



「そうたがてて繋いであげる!」



と、手を繋いでくれたのです。


その時、小さいながらにときめき


初恋が始まりました。



母親が病院の先生に説明してくれ


一緒に、とは行かないけれど

同じ部屋で打つ事が許可されました。



最初にそうたくんが打ちました。

少し涙目になっていて



やっぱり痛いんじゃん!!

となっていたのをよく覚えています。


でも、そうたくんは

涙を我慢して笑いかけてくれました。



私はその笑顔を信じて

頑張って注射を打ちました。


やっぱり、痛かったです。



号泣する私を

そうたくんは慰めてくれました。


頭をポンポンしてくれました。


そんなそうたくんも、泣いていました。


注射を頑張ったご褒美に

そうたくんと一緒に


ナン屋さんに連れてってもらいました。


そこで、名前を教えました。

「あいかちゃん!かいいい!」


ニコッと笑ってそう言ったそうたくんは

リアル王子様でした。


そうたくんと別れ際

「また会おうね!」と


言ってくれました。


私は迷わず

「うん!」と答えました。



それから会う事も無く

月日だけが流れていきました。


再開の約束が果たされたのは

中学二年生になった時でした。



その頃にはもう

そうたくんの存在も薄れていました。


その日はスケボーで

足を骨折した友達の見舞いに


あの病院を訪れていました。



二時間程他愛もない話をし

帰ろうとしていた時


じーっと私を見つめる

男の子と目が合いました。



背は伸び、顔はシュッとして

可愛いよりも、かっこよくて。


それでも誰だかすぐに分かりました。


「そうたくん?」


私がそう聞くと

そうたくんは「覚えてたんや。」と



低くなった声で言いました。


「少し話したい。」

と言うそうたくんの提案に乗り



出口に向けていた足を

売店に向けて歩きました。


再会出来た嬉しさで気付かなかったけど

そうたくんは何故か、入院服です。


少し不安になりました。



豆乳を一本受付の人に渡し

お金を出そうとしていた時



「奢るよ。」と言って

奢ってくれました。



私は不安を振り払い

そうたくんの後をついて行きました。


そうたくんの病室は

四人部屋でした。



山の見える綺麗な部屋でした。



椅子に腰かけて

何を話そうか迷っていると



「骨肉腫って知っとる?」と

聞いてきました。



私は知らなかったので

「何それ?」と聞きました。



聞きたくない言葉が

返ってきました。



「骨に悪性腫瘍が出来るやつ。

ずっと太もも痛かったから


病院行ったらそう言われてん。


五年後生きとる確率が

60から80らしいけど


俺は肺に転移してるから

五年後生きとるとは思わん。


しかもこれ分かったん

三年も前の事やし。」


どこか遠くを見つめながら

そうたくんは一気に言いました。


泣きたいのはそうたくん。


だけど、私は

聞き終える前に涙が零れました。



生きて欲しかったのです。

どうしても、そうたくんに。



「何であいかちゃんが泣くんよ。

俺怖くないから、泣かんでや!」


いつになっても泣き止まない私に

そうたくんは、笑いかけました。



でもその笑顔が

どうしても本物とは思えず


更に泣いてしまいました。



泣き声がうるさくて

迷惑をかける前に


家に帰りました。



次の日から私は

毎日そうたくんの病室に通いました。



同部屋の人が変わる度

少し苦しくなったけど


それでも、通いました。



気付けば12月。

当たりは雪で覆われています。


「もうすぐ誕生日なんやろ?

なんか欲しいもんない?」



そうたくんの誕生日が

二日後に控える日。


私は聞きました。


「ハイチュウのぶどうのやつ。

あれめちゃ美味いから欲しい!」


そんなものでいいのか


と、少し思ったけど

聞くと病院の売店には


売ってないと言うのです。


私は家に帰る前に近くのコンビニで

ハイチュウを買って帰りました。



誕生日の日、私は

凄くルンルンした気分でした。


好きな人の誕生日を

二人きりで祝う事が出来るんだと。



だけど、私はバカで。

早く、そうたくんに会いたくて。



信号がチカチカしているのに

走って渡ってしまいました。



その時、スリップした

バイクが私の方に向かってきました。



ぶつかる!と思った時には

もう遅く。



私は全治二ヶ月の

大怪我をしてしまいました。



不幸にも運ばれた先は

そうたくんの病院と別の病院でした。



入院中、そうたくんの事で

頭がいっぱいでした。


渡せてないハイチュウを見ては

涙が溢れました。



やっと、やっと

やっと、怪我が治り。


そうたくんの病室に向かうと

そうたくんがいませんでした。



ハイチュウを

渡す事は叶いませんでした。


亡くなった


その言葉を聞いた日から

私は15キロ痩せてしまいました。


学校にも行けなくなりました。


ただただ虚無感に襲われて

枯れない涙も枯れました。



そんな私を心配した母親に

神社に連れていかれました。



そうたくんに手紙を書いて

その手紙とハイチュウを


神社で燃やしてもらいました。



ぶどうの香りがしました。

その香りが余計、苦しかったです。


でも、ほんの少し

心が楽になりました。



そうたくんが

傍にいるように感じたからです。


学校は


クラスには行けないけれど

相談室には行けるようになりました。


疎かにしていた部活で

新しい、恋をしました。



そうたくんのように優しく

そうたくんのように強い。


そんな人です。



この恋を忘れようとは思わない。

でも、私は今を生きる。そう決めました。



そんなドラマのような初恋が

私の忘れられない初恋です。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

100輪目の薔薇を君に。
薇衣夢/著

総文字数/10,292

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop