桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚が想像と違います


「今日は疲れただろう、風呂の準備を頼んでおいたから先に入ると良い」

「……え? 私がですか。いいえ、匡介(きょうすけ)さんに先に入って頂かないと」

 結婚式を終えて私達は新生活のため用意された新居へ。何もかも匡介さんに任せたというのに、連れて来られた新しい家は白く柔らかな雰囲気でとても素敵だった。
 室内のインテリアもそう、まるで私の好みに合わせ準備されたのではないかと思うほどだった。

 落ち着かずにキョロキョロとあちこちを見て回る私から荷物を取り上げると、彼はバスルームを指差してそう言った。まさか、妻の私が結婚初日から先にお風呂に入らせてもらうわけにはいかない。

「構わない。ここに住むのは俺と杏凛(あんり)だけだ、誰に気を使う必要はもないだろう。ゆっくり温まって身体の疲れを取るといい」

 そう言って彼は、私のために用意されていた部屋へと連れて行く。先に送っておいた自分の荷物はすでに運び込まれ、すでに片付けられた後だった。

「自分の荷物くらい、自分でするつもりだったのですが……」

 きっとこれを片付けてくれたのは鏡谷(かがみや)家の使用人の方たちでしょう。それを考えると、私を良く知らない人に色々見られたのかと少し恥ずかしくて。
 
「心配いらない。ここの家の事は、君もよく知る寧々(ねね)さん任せることになっている。この部屋を準備したのも彼女だから」

「寧々が?」

 寧々は実家にいる間、私の事を支えてくれた使用人だった。両親以外の身内からさえも疎ましがられた私の味方でいてくれた女性。


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