彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
君は僕の娘だから
「ごめん…。謝っても、許されないことは承知している。時々、寝言で樹里ちゃんの名前を呼んでいたからお子さんの名前かな? と思っていたんだけど。初めて会社に来てくれた時、樹里ちゃんの名前を聞いて繋がったと思ったんだ」
「繋がったって、どうゆう事ですか? 」
「ずっと「樹里、ごめんね」って寝言で言っていたから。それによく、自分の事を自分で痛めつけていたから…。きっと、辛い事があったんだって察していたよ」
自分で自分を痛めつけていた?
(いいこと教えてやるよ。母さんがいなくなった付近で、こんなもの見つけたんだ。警察には言ってないけど)
そう言われて見せられたのは、宗田ホールディングの名刺で宇宙の名前が入っていた。
(そいつが母さんを誘拐したんじゃない? 金持ちだから、いくらでも隠せるし。こんな長い月日、見つからないなら監禁されているしか考えられないし)
そう聞かされて間もなくだった。
樹里宛に一通の手紙が送られてきた。
その手紙には「助けて」とパソコン文字で書かれていて、写真が同封されていた。
その写真は樹里の母であるジュリーヌが、傷だらけの姿だった。
顔や腕などに無数の傷がある姿を見て、誘拐されて監禁されているのは本当だと樹里は思い込んでしまったのだ。
でも…
もし、宇宙が言うことが事実なら…。
「樹里ちゃん。お母さんは…」
「もういいです。その事は…」
話を遮った樹里に、柊は驚いた目を向けた。