彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
笑みが消えてから…

 話し終えた優は一息ついた。

「すみません…きっと、全ては私は悪いのです。…妻を亡くして間もないのに、ジュリーヌとの再婚を選んでしまったのですから…」
「そんな事はありませんよ。亡くなられた奥さん、ジュリーヌさんとの再婚を祝福してくれていますよ

 え? と、優は宇宙を見た。

「上野坂さんが話している間に、亡くなられた奥様がずっと傍にいました。「もういいから、幸せになって」と言っていましたよ。何も思いは残していないと。上野坂さんが、一人で頑張っているのをずっと見ていて。ジュリーヌさんと出会った時、この人と幸せになってくれたらいいのにって思ったそうですよ」
「…妻が…そんなことを…」

「亡くなった人は、この世に生きている人が幸せになる事望んでいます。僕の妻もそうです。…息子さんの事は、少し時間がかかるかもしれません。でも、樹里さんはきっとわかってくれていますよ。
そんなにご自分を責めないで下さい」

 宇宙にそう言われると、優はちょっとだけ心が軽くなったのを感じた。


 そう言えば樹里も、小さい頃はよく同じような事を話していたなぁ…。
 妻の命日が近くなると「お父さん、とっても可愛い女の人がいたよ。お父さんに、幸せになって下さいと伝えてと言われたの」と言っていた。
 
 大紀が反抗するようになっても樹里は「お兄ちゃんは寂しいだけだよ。お父さんに、すごく甘えたいみたいだよ」と言っていた。

 その言葉を聞き流してた優。

 だがもしかすると、樹里は今の宇宙のように見えないものが見えていたのかもしれない。

 
 そう思って優はじっと宇宙を見つめた。

 穏やかそうな顔立ちに、キリッとした目をしている宇宙は、どこか樹里に似ているような気がした。

 まさか…錯覚だ…
 そう言い聞かせた優。

 しかし。

 柊の小さい頃の写真に、一緒に写っている女の子が目に入りドキッとした。

 その女の子は、小さい頃の樹里とそっくりな顔立ちをしていた。

「あの…この女の子は、どなたでしょうか? 」
「ああ、この子は柊の双子の妹になる楓(かえで)です」

「妹さんがいたのですか? 」
「はい。今はアメリカで国際弁護士として働いていますので、日本にはいません。アメリカで結婚して、家族もいますので日本にはめったに帰ってこないので。まだ紹介しておりませんでしたね」

 双子の妹…
 双子なのに似ていない…。
 
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