彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
初めまして…お兄さん

 翌日。

 カーテンから差し込んでくる朝日で目を覚ました大紀。

 うつらうつらと目を覚ましながら、何だか久しぶりにぐっすり眠れたような気がした。
 色々と考えていたが、いつの間にか眠ってしまっていた。
 特に嫌な夢を見る事もなくスッキリと目覚めた大紀。


 時刻は8時を回っていた。
 優はもう出勤してしまいいなかったが、温かい朝ご飯が用意されていた。
 
 久しぶりに利朝ご飯を食べた大紀は、ちょっと顔色も良くなっていた。


 大紀の新しい着替えが用意してあった。
 優からはメモ書きが残されていた。

(必要なら使いなさい。お前の未来の為に役立てればいい)

 そう書いてあるメモの下には封筒が置いてあった。
 封筒の中には10万円ほどのお金が入ってた。
 そしてその横には真新しいスーツも用意されていた。

 10万円のお金。
 以前の大紀なら、たったこれだけと思ったが、今はとても大切なお金に思える。

 未来の為に役立ててと優は書いていた。
 
 未来に進むには、やるべきことがある。

 大紀はそう思った。




 金奈総合病院。

 今日は樹里は出勤する前に柊の下へやって来た。

 傷口が治りが早く、あと2日程様子を見て退院できるようだ。
 一人で歩く事も出来るようになり、ご飯も食べられるようになった柊は顔色も良くなっていた。

「樹里さんが付き添ってくれていたおかげで、治りも早くて良かったです。有難うございます」
「いえ、お礼を言われるほどの事は…」

 ちょっと照れ臭そうに、樹里は視線を落としていた。

 そんな樹里を見て、柊はそっとベッドから出てきて樹里に歩み寄って行った。

「樹里さん」

 樹里に歩み寄ると、そっと顎に手を添えた柊。
 ドキッとした目を向けた樹里に、柊は優しく微笑みかけた。


「退院したら、まだ暫く自宅療養になります。なので、その間にやりたいことがあるのですが。付き合ってもらえませんか? 」
「私が? 」

「はい、樹里さんしか付き合うことができませんから」

 何をしようと言うの? 
 キョンとしている樹里に、柊はそっと唇にキスをした。

 不意打ちのキス…。
 でも心地よくて…。

 ギュッと柊の腕にしがみついた樹里。

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