絢は、そのままスタジアムの外に私を連れ出した。

3月下旬の少しだけ肌寒い風が、無防備な頬をすり抜けて行く。

私の心と同じように厚い雲の覆った夜空を見上げると、7分咲きの桜が眼に入って来た。

入口付近から南に30M程続く桜並木道をどちらからともなく歩き始め、真ん中辺りで絢が立ち止まった。

そして追ってが来ないことを確かめ、薄暗い木の下へ私を押し込み2人身を隠した。


「……大丈夫?」


「……」


絢は、何も答えられず苦笑いする私の想いに寄り添うように二度背中を叩き返した。


「……参ったね。純さんには、ほんと驚かされる。念の為に聞くけど、プロポーズ受けたりしないでしょうね?」


今度は即頷く私に、絢から安堵の溜息が返された。


「ならいいけど。かおりは、肝心なところで情に流され後悔するよね。もう同じ過ちはしないで」


また過去を蒸し返す……。

確かに二回流されて付き合ってすぐ別れたけれど、もう他人軸で生きない! 自分軸で生きる! と決心したから、純さんに関してはかなり頑張ってきたと思うのに。

その証拠に約束破って付き合ってないもの。

……でも自分軸で生きるって難しい。

時に誰かを傷付けることにもなる。

ワガママと自分軸の境界線も曖昧で良く分からない。

でも自分の気持ちに正直に生きたい。

もう誰かの幸せの為でなく、自分の幸せの為に生きたいから。