「……今、なんて言いました?」

 春の風が気持ちいいテラス席、飲みかけていたグレープフルーツジュースのストローを咥えたままで私は大学時代の先輩に詰め寄った。
 彼は少しひょうきんで悪戯好きな所もあるが、わりと面倒見のいい男性なのだと学生時代から知っている。

「ん?だからお前は我慢強くて、少しの事じゃへこたれない奴だってトコ?」

「ええ、そうですね。辛抱強さには自信があって……って、そこじゃなくて。仕事先を紹介してやろうか?って話したところですよ。」

 そう、長谷山(はせやま)先輩は私に間違いなくそう言ったのだ。
 もちろん求職中の私がその言葉を聞き逃すはずも無く、こうしてジリジリと先輩に詰め寄っているわけなのだけど。
 前の職場で上司と揉めてから嫌がらせを受けながらも耐え続けたのに、三か月前にリストラ候補に入れられて……

 今は無職の25歳、独身女である。

 そうはいってもアパートの家賃だってギリギリ支払っているけれど、貯蓄だって残りわずかしかない。必死で就職活動に励むけれど、いまだにいい返事は貰えていない。
 もはや藁にもすがりたい気持ちであるのは間違いなくて。

「俺の知り合いが「すぐに部下が辞めて困っている、誰かいい奴はいないだろうか」ってね。そしたらなんとなく凪弦(なつる)の顔が浮かんで。」