最低限の物しか残さなかったので荷物の整理はすぐに終わり、白極(はくごく)さんと永美(ながみ)さんは仕事に戻ると言って部屋を出て行った。疲れたでしょうからゆっくり休んでてくださいと、永美さんは優しい言葉をかけてくれたのだけど。
 一人残されても何もない部屋ではすることもなく、キョロキョロと部屋の中を見回してみる。四畳半ほどの広さの部屋の壁には小さなクローゼットと、鍵のかけられた扉が一つ。

 立ち上がりじっと扉の鍵穴を見つめてみる。さっき永美さんのこの扉がなんなのか問い詰めたが、笑って誤魔化された。白極さんの方が「さあ、俺に聞け」と言わんばかりの顔をしていたから、あえて無視しておいた。
 何度かドアノブを回してもガチャガチャと音がするだけで開くわけもなく……

「まあ、いっか……」

 大きな窓から見える空はもう茜色に染まっている。慌ただしい一日を過ごした疲れが一気に襲ってくる気がして、一度シャワーを借りて汗を流すとそのままフラフラとベッドに横になった。
 下僕に用意されたとは思えないフカフカのベッドに身体を沈めれば、すぐに眠気が襲ってきた。

「少しだけ、白極さんが帰ってくるまで……」

 そう言って瞼を閉じれば、羊を数える暇もないほどの速さで私の意識は深い場所へと落ちていった。