愛の距離がハカレナイ
20
私は空港に立つ。

あれから会社との話し合いが何度持たれた事だろう。

「ごめんね、香澄。赤ちゃんの顔を一番に私が見る予定だったのに。」

すっかり大きくなったお腹を撫でながら、香澄が笑う。

「本当よ、もう少しなのに。」

そんな香澄の肩をそっと篤志さんが触れる。

「産まれたらすぐに知らせるから。」

「こんな状態で見送りに来てもらえて‥。」

私はそこまでしか言葉をつなげなかった。

「これから新しい生活が始まるのに泣いていちゃだめでしょ。」

そんな事をいう香澄だって、半泣きじゃない。

私はそんな憎らしい思いも、いつものように言葉に出来ない。

「会社は一度に二人も事務が抜けて大変ね。」

産休に入ろうとしている香澄は他人事のように言った。

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