花筏に沈む恋とぬいぐるみ
「花ちゃんのお父さんが関係しているとなると、年代的には絞れてくると思うから。一度家に帰って、明日にもう1度来たらいいんじゃないから。服は乾かないと思うから、その服で帰っていいよ。タクシーに乗れば大丈夫だじゃにかな」
「ここで待ってる」
「でも、夜中になっちゃうよ?家族も心配するだろうし」
「一人暮らしだから大丈夫。それに、早く結果知りたいし」
「わかった。じゃあ、ソファで待ってて。話しながらなら、俺も眠くならないから付き合って貰おうかな」
「うん」
どうして、そんな事を言ってしまったのか。
花は自分でもよくわからなかった。
疲れてしまったから、動きたくなくなった?美味しいごはんで安心した?久しぶりに笑えたから?
この場所を居心地がいい、なんて思ってしまったから?
普段の花だったら家に帰っていたはずだ。
自分の気持ちがわからない。
全てはこの男のせいだ。
優しく微笑む凛を見て、どんな顔をすればいいのかわからず視線を逸らす。
と、ソファにはいつの間にか起きたのか凛のテディベアがこちらを向いて座っていた。
「………おはよう………」
凛には聞こえないぐらいの声でそう挨拶したのは、花と濡れたテディベアとの秘密。