「ん、届かないか。やってくれ」
 「クマ様は優しいね」
 「一応恩人だからな」


 そんなやり取りの後にふわりと何かを掛けられる。それが大判のブランケットだとわかるやいなや、花はまた眠りについた。

 クマ様って何者なんだろうか。
 いや、これは夢なのだろう。

 気になりつつも眠気には勝てなかったのだった。











 「ん………あ、れ?」


 結局、花が目を覚ましたのは朝になってからだった。レースのカーテンから、朝日が射し込んできており、眩しさを感じたのだ。
 このカーテンは自宅のものではない。自宅のものはもって安いものでこんな繊細なレースではないな。不思議に思いながら、体を起こす。
 と、目の前のテーブルには分厚いファイル達が積まれ、店内の棚にはこちらを向いて穏やかな表情を見せる彩り取りのテディベア達。そして、向かい側にソファには黒い髪の男がソファに座り毛布にくるまって寝ていた。その横には仰向けに倒れた、凛のぬいぐるみがあった。体が随分乾いたようで、毛がふわふわに戻っていた。

 花は靴を履いて(いつの間に脱いだのだろうか?)、凛を起こさないように彼が眠るソファに近づき、少し不格好なクマを見つめる。少しバランスが悪い顔は愛着さえも感じられる。


 「……君、昨日ブランケットをかけてくれたの?」
 「………」



 花は寝ていたクマを抱き上げて、目の高さまでもってくる。すると、なぜか瞳がこちらに向いたように感じる。それは普通の作られた瞳だ。光の加減でそう見えたのだろうか。まじまじとクマを見つめると、花はニッコリと微笑む。
 このクマを自分が助けたからだろうか。妙に愛着がわくのだ。自分の腕に抱いても、体にフィットするし、何だか話しかけたくなる。


 「君には何だか不思議だね。話したくなる」
 「………」


 返事がないのはわかっている。
 けれど、そんな風に言ってしまう自分に気づき、昨夜の凛と同じだな、なんて思ってしまうのだ。