花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 2人はまじまじとレース編みのドレスを見つめながら歓声を上げる。
 想像以上の反応に、花はホッとしつつも驚きを隠せなかった。


 「あぁ。これはもう売れるぞ」
 「そうだね。商品化したら即売れるだろうね。それぐらい完成度は高いよ」
 「この部分にビーズとか入れも綺麗じゃないか?」
 「それも綺麗だと思う!けど、レース編みだけの純粋さも捨てがたいけど」
 「まぁ、それもそうだな」


 成人男性がぬいぐるみのドレスを見て、嬉しそうに微笑み、真剣に議論している。そんな様子は珍しくもあるが、今はそう言った趣味を持つ男性も多いのだろう。けれど、花の身近ではそんな人はいなかったので、褒めてもらった事よりもそちらが意外だった。
 けれど、凛はぬいぐるみ店の店主なのだ。可愛い物が好きなのだろう。それにクマ様も。


 「ね、クマ様。着てみてよ。花ちゃんも、このドレス着せてみてもいい?」
 「それはもちろんいいけ凛さんに、型紙もらったから大丈夫だと思うけど、少し心配だな」
 「俺、男用のテディベアなんだが」
 「いいからいいから」


 「しょうがないな」と、言いながらクマ様は凛に手伝ってもらいながら、来ていた服を脱ぎ始めた。
 それを見て、花は咄嗟に視線を逸らした。クマ様は体はテディベアだが、四十九日の奇で魂が入っていると考えれば、元は人間だった存在だ。それに、声や口調、そして凛との話し方で、凛と同じぐらいの年齢ではないかと思っていた。男性の着替えを見るのはどこか居心地が悪く、そわそわして様子で視線を窓の外へと逸らして着替えが終わるのを待った。

 「ピッタリだー!そして、可愛い」
 「初めて作ったのに、このクオリティはすごいな」
 「………」

 

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