憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
2章

「まぁ、昨夜は随分と陛下と熱い夜を交わしたようね?」

翌朝、昼のパーティーに向けて準備を整えていると、控室にやってきたのは、私の幼なじみで親友のクリスティンだった。

彼女はやってくるなり、下着姿の私のある一点にツーっと触れた。

「わっ!どこ触ってるのよ!」

慌てて両手で胸元を隠す。
彼女とは小さなころからよく家を行き来していて。彼女が昨年結婚をして公爵夫人になるまでは、月に一度はどちらかの家でお泊まり会をしていたくらい気安い。



「ふふ、見えそうで見えない絶妙な場所ね!陛下ったら我慢できなかったのね」

そう彼女が指したのは紛れもなく昨夜、ジェイドがつけた胸のあの印の事で

不意にそれを思い出した私は、顔が熱くなるのを感じた。

「あらあら、赤くなっちゃって!憧れだった殿方と結ばれたご感想は?」

そんな私の反応を微笑ましくとった親友は、クスクスと笑って、用意された椅子に腰掛けた。


彼女は現在妊娠中なのだ。それなのに親友の晴れの日だからと、こうして空いた時間に訪ねてきてくれたのだ。

そんな彼女に、まさか夫が本当は女で、この印をつけたのはジェイドだとは言えない。

というより、巻き込むわけにはいかない。


今私の準備をしている侍女達は、皆陛下が私のために教育を施し用意した者達だというので、おそらく陛下の秘密を知っている上、私の監視役でもあると思うのだ。

朝、私を起こしにきた唯一実家から連れてきた侍女のアイシャは、目の下にすごい隈を作っていた。

どうやら彼女も、昨夜知らされたのだろう。
「大丈夫?ひどい顔をしているわ」と声をかけたら「当事者のお嬢様がなぜ平然と寝られたのかが不思議です」と呆れられた。


「別に、普通よ、、、陛下は、、お優しかったわ」

してないのだから感想を聞かれても困る。当たり障りのない事を言ったはずなのに、クリスティンは「良かったわ!」と声を弾ませた。



「私心配だったのよ!ほら最初って痛いじゃない?アルマって昔ジェラルド殿下の投げたボールが当たっただけで痛くて泣いていたほど痛みに弱かったじゃない?痛いから無理ーって寝所で泣き出して陛下を困らせるんじゃないかって昨夜は気が気じゃなかったのよ」

親友の言葉に、なんだか色々、、突っ込みたいこと満載なんだけれども、、。

「ははは、心配アリガトウ。ダイジョウブダッタワ」

なんとか取り繕って笑った。


ジェイドの投げたボール、あれ騎士のトレーニング用のすごい重いやつだったんだから!それをあのバカすごい勢いで投げて、コントロール外して、顔面に当たったのよ!ちょっとやそっとの痛みじゃ無かったんだから!
顔半分無くなったんじゃないかって本当に心配したくらいなんだから!

え、何?最初ってそんなに痛いの?あのボール顔面に当たるくらい?

それは、、、泣くかもしれない。

しかもきっとその相手はジェイドなのだ、、、2重の意味で怖い!怖すぎる!


「そういえば、さっきジェラルド殿下に偶然お会いしたの!噂通り逞しくなられて、凄いイケメンになっててビックリしたわ」

考えたそばからクリスティンの口からジェイドの話が出てきた。

「もう貴方のところまでそんな噂が行ってるの?」

妊婦の彼女は、昨日の式典も舞踏会も出席していないはずですある、それなのに彼女が知っているという事は相当な話題になっているのだ。


「エリックがね!御令嬢方が色めき立ってたって!あれはすぐに婚姻の話が舞い込むだろうなぁって。確かに実際見てみて分かったわ!無愛想で近寄りがたいけど、それにあの美貌ってのが逆にイイのよ!」

グッと拳を握ったクリスティンは、力説する。
夫のエリック氏が聞いたら、どう思うのだろうか、、、。

「ユリウス陛下の次はジェラルド殿下の結婚ね~しばらく王族はおめでたい事が続きそうね!」



ジェイドの結婚、、、

そう聞いて私はドキッとする。


昨日は自分の事だけで精一杯で、、、そんな事まで考えられなかったけど。


王位継承権第2位にいるジェイドが、ずっと独身でいる事は難しいだろう。

いずれ、どこか高位の貴族、もしくは外国の王女殿下なんかが彼の妻になる時が来るだろう。

それまでに私とジェイドの間に男児が産まれていなかったらどうなるのだろうか、、、。

まさか、彼は私とも、そして妻ともそういう関係を持つのだろうか、、、。

それは、なんか、いやだ!!

不倫だ、、、間違いなく。

私が不倫相手。

というより、奥様はそんな事を許すのだろうか。

相当理解ある人じゃないと無理ではないだろうか。

もしかしたら修羅場が起きるかも!

考えていたら、ワナワナ震えてきそうになって、慌てて、両手を固く握りしめた。


怖い、怖い、、今は考えるのをやめておこう。
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