友達作りは計画的に


「気遣いはありがたいけど……本当に特別な理由はないんだって……」と、別に隠す程の理由もないので夏の大会に出ないでいたらやる気が一気になくなったのだと説明した


「何か気持ちが切れたと言うか……仲浦だと月にあと3日多く練習に出ないと試合にも出させてもらえないから、試合に出る気も無くなった俺からしたら逆に好都合って感じでエンジョイしてるってだけだよ」



特に変わった話をするわけでもないので淡々と話す岡崎に斉藤は含み笑いをしながら「だからギャル彼女探してるの?」とツッコんできた



「アイツそこまで話したの?
マジで来週会ったら殴ってやる」


「アハハハハッ
だからナッチーが岡ちゃんを超構ってるからどうなるんだろって思ってあの子達にもその事は教えずに泳がせてたんだよね~
ナッチーなんてどうよ?
超ギャルじゃん」


「ナッチーね……いいんだけど絶対からかってきて終わりっぽいからね~
ああいう子こそ俺なんかを本気で好きにはならないでしょ
まぁ」



「アハハ……意外とナッチーみたいな子って人前だけはしゃぐような人も多いから案外本気で気があるのかもよ~?」


「フフッ 斉藤さんにそそのかされると何か逆に裏がありそうで警戒心が出るな
でも斉藤さんが俺の部活の事を気にしてくれたのはちょっと嬉しいかも」



「そりゃ一番近い友達だし、本当は強いみたいな話聞いちゃったら気になるのは当然でしょ?
……本当はさ、岡ちゃんが何か凄い嫌な事があってやる気を無くしたのかと思ってたからさ、私がちょっとは相談に乗ってあげようかとも思って聞いてみたんだよね
イジメとか嫌がらせとかさ……男子で一番ぶっちゃけ話をした友達の岡ちゃんだから私で何か力になれるなら……と思ってね」


「それは超優しい
ありがと 
でも本当にそう言うのはないから大丈夫だよ」


「そっかぁ……じゃあ本当に理由がないんだ?
単なる燃え尽き症候群的なやつかな?」


「ん~ そうだねぇ……本当にコレと言って心当たりがないんだよね
別にやりたくないって事でもないから一応推薦で入ってるし練習はしてるんだけど
まぁ今後彼女が出来て、その彼女から胸にギュッて俺の頭を押し付けて抱きしめながら『カズ君のカッコいい所見た~い』って可愛く言われたらやる気出すかもね」


「ブワッハハハハハハッ
超バカ丸出し~
下心しかないし~」



斉藤は心配そうにしていたから素直に話すと彼女も特別な理由もない事で安心して爆笑しながらツッコんできた



「ハハハッ 笑うなっ!
だって一回やる気無くなったら何かきっかけがないとまたやろうって気にはならない感じかな」


「その気持ちは何かわかる気もするけど……
たぶん私なら彼氏に言われても『お前の為になんかやるわけねぇだろっボケェ!』ってキレると思うけどね
……て言うかさ、そもそもそんな事する子いる?
岡ちゃんマンガの読みすぎ~
して欲しいなら試しに私がやってあげよか?」



彼女の申し出に、それをして欲しいのは山々だが斉藤にされたら本当に練習に出ないといけなくなってしまって、これからまだ遊びたい岡崎は後ろ髪を引かれる想いで断ると彼女から思わぬ質問が出た



「じゃあさ、部活紹介試合にも出ないの?」



仲浦高校は各部活によって紹介方法は違うのだが、運動部は普通の紅白戦をしたり一年生対二、三年生の試合をしたりなど様々な形式で実際の試合を見てもらい入部希望者を募るのが恒例らしく、新体操部は学年毎に毎年試合で行うような演舞をするようで斉藤も一年生の団体演舞とソロ演舞をするらしく今は部活ではその練習をしているようだ



「おっ それなら新体操の部活紹介の演技を見に行こ~
ちなみに俺は何も聞いてないし練習もギリギリしか出てないからたぶんそれにもエントリーされてないんじゃないかな?
て言うか……まさかだけど、アイツらに様子を伺うとか何かを頼まれたの?」


「アハハハハッ
別に頼まれてはないけど『岡ちゃんが試合はしないって言ってたから……マジでどうしよ?』って超愚痴って来られただけで私は知らないって答えてはおいたけどね
だから単に私が気になってたんだよね」


「その事かな?
アイツら主語がないから、この前そんな話になった時に普通の大会の事を言ってたのかと思って『出ない』って答えたんだよ
ん~ まぁ俺抜きで一年生7人いるし団体戦の人数はいるから出なくていいならこのまま出ないけどね」


「え~っ 残念~
実は何だかんだ言いながらも岡ちゃんは優しいからそれには出ると思ってたから見に行こうと思ってたのに~っ
1試合くらい出てよ~」


「そもそも俺はその事すら知らなかったから何試合あるのかもわからないんだから」


「じゃあさ、何試合かあるなら出てよ」



彼女は柔道部員と話していたなら試合数も聞いているだろうから下手に答えるとまた何か嵌められるような気がして「……保留」と答えると、斉藤は笑ってはいたが強気な眼差しで岡崎を見た

 

「うわっ 超卑怯な~っ
仕方ない、こうなったら最終手段を使うか……」



そう言うと斉藤は立ち上がり岡崎の前に立つとニヤッとして少し前屈みになり岡崎の両肩に手を置いた



「な、何?
まさか力ずくで?」


絶対に何か仕掛けてくるのがわかった岡崎は警戒したが、斉藤の可愛い笑顔が彼女の手の長さの距離で真正面にある事で岡崎は緊張で上擦った言葉で返すと彼女はニヤニヤしたまま返事をした
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