涙の涸れる日

再会

 あぁ、そうだ。お礼を言わなきゃ。
 私は男性に頭を下げて
「ありがとうございました」

「あ、いや……」

「本当に助かりました。救急車を呼んでくださって」

「無事、助かると良いね」
男性の言葉に緊張が解けたのか涙が零れた。

「はい。本当にそう思います」

すると男性は
「人違いだったらごめんね。君、本多紗耶さん……かな?」

「えっ?」
何で私の名前を知ってるの? さっき警察の書類に名前を書いたのを見られた?
「あの……」

「覚えてないかな? 俺、同じ大学で君より二つ上だったけど……」

「えっと……」

「高梨佑真っていうんだけど……」

「えっ?」
高梨佑真先輩? えっと……。茶髪にピアスの高梨先輩?

 黒髪の短髪でピアスもなくて……。全然見た目が違うんだけど……。

「一度だけ君に声掛けて、こっ酷く振られたんだけど……」

「はぁ?」
そんな事があったような……。

「ところで、喉渇かない? 良かったらお茶でもしようよ。それとも急ぐ? あぁ仕事中かな?」

「仕事中ですけど大丈夫です。私も喉カラカラです」

高梨先輩は笑顔で
「じゃあ、そこのカフェに入ろう」

「はい」

 和菓子屋さんの隣はカフェだった。


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