脆姫は過去に生きる
「具合が悪くなったら私に合図を送ってほしい。その時は直ちに中断し安静にできるようにする。」
鉄王は重役たちと話をして、私が座って儀ができるように考えてくれたり、衣装もなるべく簡略化してくれるらしい。本来なら食事やお酒をふるまう内容も、その場では振舞わず、持ち帰ることになるらしい。この世界の人たちにとってはかなり異例なことだと富さんも言っていた。

「紅姫の体調が最優先だ。」
「ありがとうございます。」
「今夜は早く休もう」
「はい」
いつもよりも早く寝台に入った私たちは、いつものように鉄王に抱きしめられて、夢の中に落ちた。



翌日に起きることなど予感すらせず・・・
夢の中で私は咲さんを見た。
いつものように私の方を見つめて何も言わない咲さん。
でもその瞳からは何かを言いたげな様子だけが伝わってくる。

咲さんはもしかしたら翌日に起きることを知っていて、私に知らせようとしてくれていたのかもしれないと・・・後から私は知ることになる。
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