脆姫は過去に生きる
第3章 ~この世界の中で~
朝になるとそこには鉄平はいなかった。
ぐっすりと眠っていた私を気遣って起こさないように行ったのだろう。

鉄平が眠っていた場所はすでに冷たくて、早くに寝台から出たことが分かる。

あとから富さんが、鉄平は幼いころから戦に備えて睡眠に関しても特別な訓練を受けていると教えてくれた。
ほかの人よりも短時間で体力を回復できるように幼いころから睡眠時間の制限を受けたり、物音ですぐに目覚めることができるような体になっているらしい。

戦。

私にとってはどこか遠い世界の話だった。
でも、なまなましくこの世界に生きる人は鉄平もすでに剣をみにつけている。

私ですら、いつも短剣を服の中に隠されている状態だ。
< 59 / 251 >

この作品をシェア

pagetop