男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
第五章


 私がセリウスの身代わりで宮廷に上がり、サイラス様の従者として仕えるようになって二カ月が経った。この間、私は毎夜サイラス様と同じ寝台を温めて過ごしていた。
 夜のサイラス様は熱く情熱的で、私はそんな彼に身も心も乱されて、あっという間にまともな思考を失ってしまう。そうしてサイラス様の囁きで目を開くと、決まって窓の外は宵闇を照らす星々から朝日が主役に変わっているのだ。
 最初は戸惑ったけれど、いつしかそんな朝を迎えることが当たり前になっていた。
 そんな、ある日の朝。
「どこか具合が悪いのか?」
 朝食の席で、向かいに座ったサイラス様が唐突に問いかけた。
「え?」
 実はここ数日、体の怠さと胸のむかつきに悩まされていた。とはいえ、連日の睡眠不足からくるただの疲労と原因は明らか。そして己の健康管理は従者に限らず宮廷従事者にとって必須であり大前提だ。これが出来なければ、そもそも宮廷に従事する資格はない。
「ここのところ表情が優れん。食も進んでおらんではないか」
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