男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
最終章


 幾多の歴戦をくぐり抜けてきた俺にとっても、立ち会った出産は壮絶なものだった。
 神事から一夜明けた翌朝、日の出と共に迎えた誕生の瞬間は、体の奥底から歓喜の震えが込みあがった。我が子があげた力強い産声に愛おしさが溢れると共に、この幼い命を俺が守っていくのだと胸に確固たる決意が浮かぶ。
 同時に、これまでに俺が奪って来た多くの命のことを思った。好んで奪った命など、ひとつとしてない。しかし、目の前の勝利のために必要とあらば、躊躇わずに奪ってきた。そうしなければ、奪われるのは己の命だったからだ。
 ……しかし、俺が奪ってきた彼らも皆、祝福を受けながらこの世に生まれた命だったのだ。我が子の産声を聞きながら、そんな当たり前を今さらながらに胸に刻む。
 命を奪う戦も、新たな命を生む出産も、どちらもが命がけだ。しかし両者は命に対する捉え方が天と地ほども違う。
 数多の命を奪ってきた男の俺と、新たな命を産み落とした女のセリーヌ。
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