終業時間ぴったりに仕事を切りあげて、智奈は会社を出た。

そうしても、だれも文句を云わない。

ひょっとしたら、智奈がいなくなったことでほっとしているのではないか、とそんな疑心暗鬼にも陥っている。

たぶん自意識過剰だ。

みんな、それぞれに仕事があって人のことに関心を寄せている暇はそうない。

 智奈はこの一カ月ですっかり金曜日恒例となったコース――ウィンドウショッピングで時間を潰したあと、お一人様の夕食をゆっくり取って、それから歓楽街に行くというコースを今日もたどった。

 夜の九時からホストクラブ“白馬の王子(ロマンチックナイト)”に来て二時間をすぎた。

店内は男女の会話だったり笑い声だったり、至ってにぎやかだ。

うるさいとは少しも思わないし、そもそもそういう場だ。

「智奈さん、僕で退屈してないですか。シンジさん、もうすぐ戻ると思いますので」