幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 ムラトは、ドワーフの火酒を飲んで酔わないエルフというのは初めて見た。森の民である彼らは、弱い果実酒くらいしか飲まないと思っていたのに。

「なんかさ、ほっとけない。サージが心配だというのも、それが理由だろ?」

 ムラトの言葉に、サージは大きくうなずいた。
 アルダリオンの言いたいこともわかる。
 リーゼはまだ五歳。ドワーフと人間では育つ速度が違うけれど、ムラトの知るあの頃の子供とリーゼは、根本的に何か違う。
 領主だから、とリーゼは何かと口にする。
 この屋敷にいる皆は家族だから、とも。
 もちろん、リーゼのその気持ちは嬉しいのだが――それを危うい、とも思ってしまうのは、自分のことを後回しにしてつぶれた人間を何人も見てきたからだろうか。
 黙ってしまったムラトのグラスに、新しい火酒が注がれる。

「たぶん、あなたと同じことを、ここにいる者達は考えていると思いますよ」
「だから、エルフは苦手なんだ。人の心を簡単に読みやがる」

 そう嘘ぶけば、アルダリオンは口角を上げた。

「それは、あなたも同じでしょうに」
「ふん。主の資質を見抜いているのは、吾輩だけじゃないってことだよな」

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