執事としてのアルダリオンはともかく、教師としてのアルダリオンはとても厳しい。部屋の隅に身を横たえていたシドが、ぱたぱたと尾を振った。

「そろそろいいのではないか? 主はまだ子供だ。遊ぶ時間も必要だろう」
「遊ぶ時間が必要なのは、あなたの方ですよね、シド?」

 首をかしげて、シドを見るアルダリオン。若干シドが居心地悪そうになった。

「まあ、いいでしょう。勉強の時間がずれ込んだのは、リーゼお嬢様のせいではありませんし、学ぶ時間はたっぷりありますからね」

 今日の午前中は、領主としての仕事が忙しかった。そのため、昼食の時間が遅れ、午後の勉強の時間もずれこんでしまったというわけである。

「シド、行こう!」
「おう、しっかり走って身体を作るのも大事だからな!」

 リーゼの誘いに、シドの尾がピンと立つ。教科書を片付け始めたアルダリオンは、顏だけこちらに向けて言った。

「リーゼお嬢様、屋敷の外に出る時には声をかけてくださいね」
「わかってるから、大丈夫!」

 走り去りながら、リーゼはくすりと笑った。アルダリオンは心配性だが、こんな風に心配されるのは嫌ではない。