幼女で領主で聖女様！？名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる！

　ムラトからビールをおごってもらってご機嫌のアルダリオンは、再びリーゼの手を引いて歩き始める。

「アルダリオン、すごいねぇ……！　あんなに力持ちだって思わなかったよ！」

　リーゼの言葉に、アルダリオンは一瞬足を止めた。それから、人差し指を自分の唇の前で立てた。

「これからのお話は、内緒でお願いしますね？」
「ん？」
「実は、自己強化の魔術をかけていました！」
「あ、それ、使えたんだ？」
「はい、使えました！」

　アルダリオンの言う自己強化の魔術とは、肉体を強化する魔術のことだ。これがあると、人並外れた力を発揮することができるらしい。

（……それってズルなんじゃ）

　と一瞬思ったけれど、ムラトもたぶん気づいているだろうからこれでよしとしておこう。
　ふと前を見れば、見回り中のサージとリリンダが歩いているのに再び気が付いた。
　リリンダの手には、りんご飴がある。サージが買ったのだろうか。

「リリンダは、楽しそうですね」
「……うん」

　アルダリオンの言葉にリーゼも同意する。