「リーゼお嬢様に、風邪などひかせるわけにはいきませんからね」

 そう言うアルダリオンは、特に厚着をしているわけではない。いつもと同じ服装だ。

「アルダリオンは寒くないの?」
「ええ、この程度なんてことありませんよ――そう言えば、シドの姿が見えないようですが。何かあったのですか?」

 いつもリーゼと一緒にいるシドの不在を、アルダリオンは疑問に思ったようだ。リーゼは、町の外を指さした。

「今日は、犬達の指導に行ってる。嫌な気配がするから、今のうちに戦える犬を増やしておきたいんだって」
「なるほど。それはよい手ですね」

 フェンリルであるシドは、犬やそれ以外の動物達と意思の疎通ができる。
 ひとりで街中に出かける時は小さな子犬の姿だが、犬達はシドの本来の姿を見抜き、彼に従うそうだ。
 そして、街中をうろつく野犬を野放しにしておくわけにもいかない。普通の街なら駆除されるだろうが、ここではシドが野犬の長となり、人間と共存する方法を模索しているところなのだ。