フリードベルク公爵家の領地デリモに到着したのは、もう完全に日が暮れて真っ暗になってからだった。
 広義のデリモといえば、フリードベルク公爵家の領地であるデリモ地方全体のことを指すが、狭義のデリモとはこの町のことを指す。リーゼが領主として任されたのは、デリモ地方全体だ。
 ヴハ王国との国境に面しているこの町は守りに適した場所ではなく、ヴハ王国が攻めてきたならば、いったんこの地は捨て、隣の領地で敵を食い止めるというのが公爵の基本方針なのだそうだ。

「……挨拶は明日かなぁ」

 馬車にはリーゼとリリンダ、子犬の姿に戻ったシドの他、サージも座っている。
 怪我はリーゼのおかげで治ったが、大事を取って馬車にいるようにというのが、仲間達からの進言だった。
 今、リーゼ達がいるのは、領主の屋敷の前だった。だが、あたりは暗くなっているというのに、屋敷には明かりがついていない。

「今日、到着予定だと知らせておいたはずなんだが……どこかで連絡が行き違ったか?」

 リーゼの正面に座ったサージの言うように、領主の館は人の気配がなかった。
 領主を迎える支度をしていないとは、いったいどういうことなのだろう。

「団長、見てくる」