死神は花を狂おしい程愛してる
非道な悪魔
羽山は、怯えていた。
もちろん花楓にではない。
きっと…花楓の背後にいる、蒼士に。

「蒼士様を怒らせてはいけません!
あの方は、とても恐ろしい方です」
「え?それは、わかってますが……」
「わかってません!
蒼士様の恐ろしさを……」
「え……」
「あの方は、昔から自分の欲しいモノは全て手に入れてきた方です。
その証拠に、花楓様を絶対に外に出しませんよね?
私共もあなた様を、敷地内から絶対に出すなと誓約書まで書かされています」
「誓約書…です…か?」
「はい。
もしあなた様を敷地外に出せば、殺されます。
例外なく……」
「え━━━?
殺っ…嘘……」
「それだけでも、わかりますよね?
蒼士様の恐ろしさ」
「はい……」
「…だから、お願いします。
どうか…どうか、蒼士様を怒らせるのだけは……
不公平だと思うでしょうが……
あの方を優しく、穏やかにできるのは花楓様だけです」

「わかり…ました…」
花楓も確かに蒼士に惚れている。
でも…こんな残酷なことを聞かされ、今後ほんとに夫婦でいられるのか、不安になってきていた。
このまま、蒼士と離れたい。
でも、言えない━━━━━
こんなことを言ってしまえば、きっと屋敷にいる羽山達が犠牲になるのだから。

この頃から、花楓は蒼士に複雑な気持ちを抱えるようになったのだ。



「あれ?花楓様?ですよね?」
突然、男性に声をかけられる。
「え?あ…えーと確か、古澤さんですよね?」
「はい、こんなとこでどうされたんですか?」

「蒼士様を待っています。
私達は急いでますので、これで……
花楓様、行きましょう!」
花楓の腰を支えるように、反対側に促す。

「ちょっ…待ってください!花楓様!」
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