死神は花を狂おしい程愛してる
無礼な雌
蒼士が帰ってきて、夕食を済ませた二人。
ソファーで並んで座り、蒼士は花楓の膝枕で横になっている。
花楓は昼間に見ていた、雑誌をまた開いた。

羽山が紅茶を淹れて、テーブルに置きながら言う。
「花楓様、蒼士様におねだりしましたか?」
「え?いや……」
「何?花楓」
起き上がった蒼士が、花楓の横に座り直した。

「いや、ほんとにたいしたことないよ」
「羽山!なんだよ!?」
「はい、お昼にその雑誌をご覧になってて、その中のレストランにとても行きたそうにされてたので、蒼士様におねだりしたらどうかってお声かけしたんです」
「ふーん。どれ?」
「え?あ…ここなんだけど……」
雑誌を蒼士の膝に置いて、レストラン名を指さした。

「へぇー、ここね。
花楓、行きたいの?」
「え?そりゃあ、お洒落だし景色も素敵だなって思ってたから、行きたいけど……」
「いいよ。連れてってあげる!」
「え…!?」
「その代わり、おねだりして?
ちゃんと、俺に……!」
「え……
蒼士さん、このレストラン行きたいな…」
「フフ…30点だな…」
「え?」
「花楓、おねだり下手だね(笑)」
そんな当たり前だ。
花楓はおねだりなんて、したことがないのだから。
お願いはしたことあっても、おねだりはない。

「じゃあ…おねだりってどうやってするの?」
「んー、そうだな~
“蒼士、このレストランに行きたいの。連れてって!”って言って?」
「そんな恥ずかしいこと、できないよ!」

てか、蒼士さん……可愛い~!
今の…母性本能くすぐられるかも…?
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