死神は花を狂おしい程愛してる
花が散る
「は?病院?
どうしたの?花楓」
「産婦人科に。
だってこんな毎日、その…蒼士さんに抱かれてて妊娠しないのおかしいなって!」
「必要ないよ…
タイミングの問題だろ?
そんなに欲しいの?子ども」

ある日の休日。
ほぼ毎日抱かれてて妊娠しないのはおかしいと思い始めた花楓が、蒼士に相談してきた。

「ただなんかおかしいなって思って……
蒼士さんは気にならないの?」
「全然」
「そっか」
「気になるなら、行く?病院」
「え?うん。
なんか病気だったら、嫌だし」
「わかった」

でも、当然蒼士が手を回している医者だ。
何もないに決まっている。

「問題ありませんよ」
「そうですか、良かった」
「こればかりは、タイミングの問題ですからね」
「そうですよね、ありがとうございます」
病院に蒼士と共に行き、今は待合室で待っている、花楓。

「あれ?ハンカチ…
蒼士さん、ちょっと待ってて!ハンカチ診察室で落としたみたい。今ならいいだろうから、取ってくる」
診察室をノックしようとすると、
「残酷だな。
まさか、避妊薬を飲んでいるなんて夢にも思ってないだろうからな」
「え━━?」
「蒼士様は、子どもさえも邪魔なんですか?
ちょっと、酷いですよ」
「あんまり言うな!あの方には、誰も口答えできない」

花楓は、診察室に入ることなく蒼士の元に戻った。

「花楓、ハンカチあった?」
この目の前にいる、死神はどこまで残酷なんだろう。
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